LANDSCAPE DESIGN ランドスケープデザイン

古峯神社庭園を訪ねる

文・写真=戸田芳樹(株式会社戸田芳樹風景計画)

協力=古峯神社、株式会社岩城

念願であった古峯神社庭園(古峯園)を紅葉真っ盛りの11月に訪れた。神社は日光の足元に位置し、最寄りの鹿沼駅からバスで1時間程の旅、きっ とひなびた里だと思っていたが大変な人出でびっくり。やはり紅葉シーズン、大勢の参拝客や観光客が押し寄せて華やかな賑わいに包まれていた。 古峯神社庭園は1978(昭和53)年、岩城造園(現:株式会社岩城)の岩城千太郎(通称:亘太郎 1898-1988)の大規模(8.25ha)な作品でス ケール、内容とも氏の代表作といえる庭園である。岩城千太郎は植治こと七代目小川治兵衛の甥に当たり、京都で修行した後に植治の伝統を受け 継ぎ、東京に進出して会社を設立した。昭和の未だ早い時期に関東で京都風庭園をベースにした新しい造園世界を築いた人である。

岩城は造園作品をビジネスモデルとして活動の場を広げ、戦後の復興期に合わせるかのように会社を大きく発展させた。岩城で行う新入社員研修は 古峯神社に宿泊し、庭園の掃除や樹木の手入れをおこない、茶室で「茶の湯」も体験するそうだ。社会人のスタートを切るにあたり誠にうらやましい 体験といえるであろう。神殿や庭園などの「場」において、神域の「気」を胸いっぱい吸って研修するとは庭師冥利に尽きるというものだ。

すべてが「もてなし」の空気に包まれている

古峯神社の境内に入り一番強く感じたのは 「もてなし」の気配が庭園を含めた全ての空間 に張り巡らされていることであった。神社の4km 手前に大鳥居が県道をまたいで早くもお出迎 え。その後、鳥居を4ヶ所もくぐり橋を2つ渡って 古峯園に進む。神域をここまで入っても神社特 有の緊張感がなく、なぜか優しい空気に包まれ ているように感じる。この理由は後程訪れた本 殿の設えや食事でのサービスの出会いなど、も てなす人々の奉仕の心とその喜びが溢れていたからである。

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