10年目を迎える東日本大震災
■出席者
もたに こうすけ
藻 谷浩 介氏(日本総合研究所調査部主席研究員/NPO法人ComPus地域経営支援ネットワーク理事長) もりもと やつき
もりもと やつき
森 本八 月喜氏(有限会社HA2代表/NPO法人ComPus事務局)
のぐち まさふみ
野 口創 史氏(NPO法人ComPus理事)
■進行
丸茂 喬(マルモ出版代表取締役)
写真=編集部、㈲HA2*(特記以外)
2011年3.11から10年が経とうとしている。未曾有の震災と言われつつ、日本の歴史をたどれば震災 列島といわれる所以が過去にも地震が多く発生していた事実によって明らかになった。 「忘れられない」「忘れさせない」「忘れてはいけない」と言いつつも、地元以外の人の記憶は薄れつつある。 そのことを踏まえ、NPO法人ComPus主催として㈲HA2が企画・運営しスタートした「藻谷浩介と行く 被災地視察バス講演ツアー」はこれまでに8回を重ね、ほぼ被災地全域を回り、被災地を訪ね、現地の方 たちの話(証言)を聞いてきた。
その報告書として㈲HA2が編集・制作・出版した書籍が5回までのツアーをまとめた『できることをできる かたちで』である。
今号の特集テーマ「災害に強いまちづくり」のメイン企画として「10年目を迎える東日本大震災「 藻谷浩介 と行く 被災地視察バス講演ツアー」を振り返って」と題して、藻谷浩介氏とツアーを企画した森本八月喜 氏と野口創史氏に話していただいた。加えて藻谷氏の著書「里山資本主義」などが新たな地方の時代の幕 開けとなった今日、コロナ禍の後に被災地の復興を見つめつつ、日本全体がこれからどのような社会、
暮らしに向かうべきか、藻谷氏が主張しているアフターコロナの地方の自立、地方の進むべき方向性に ついてもこの座談会で総括していただいた。
できることをできるかたちで
著者:㈲HA2
発行:㈱パレード270頁
定価:¥1,320
※amazonでご購入できます。
藻谷浩介と行くツアーで出会った人々
藻谷浩介と行くツアー これまでの軌跡
藻谷さんの話を聞きながら 被災地を巡るツアーを企画した
丸茂 私もこのツアーに1回目、3回目を除き 毎回参加してきました。「百聞は一見に如か ず」やはりこの目で見て、現地の方たちに触 れ実際の話を聞いてみたいと思った訳で す。丁度被災して10年目を迎え、このツアー を通じて震災後の復興の在り方を俯瞰して みようとこの座談会を企画しました。
そこで森本さんにこのツアーを企画する ことになった理由をお聞きしたいのですが。
森本 私は、東日本大震災の後2013年1月 に、福島県郡山市に新しい企業を起業しま した。東京の㈲HA2のスタッフは、お母さ んばかりが集まっていますので、被災地か ら避難してきている女性の働き方を支援す る、という目的でした。そこから福島との太 い関係ができました。
2012年の夏前、郡山での打ち合わせの後、 藻谷さん運転の車で、飯館村を抜け南相馬 までご一緒させていただく機会がありまし た。その時に、車窓を流れる光景を題材に 藻谷さんの話を聞きながら、自分の目で事 実を見ることの意味を思い知りました。
また、郡山の会社のスタッフの一人が、 桜の名所である富岡町の夜ノ森地区に実家 があり、避難区域になってしまったため、ご 両親が郡山市に移り住むことになりました。 震災と原発両方の大きな被害によって自分 の住んでいた場所を追われてしまったので す。彼女が、一時帰宅の記録をfacebookに あげていました。主をなくした家が時間とと もに変貌していく光景に心打たれ、二人で 小さな写真集にまとめました。そして、夜ノ
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