最終回 現代が問いかける森林の役割 -生態系サービスと森林美学-
Apr 22, 2020
1 minute
小池孝良(北海道大学)
経済林を対象に生み出された森林美学の目指す内容を、現代風に述べると、森林の持つ生態系 サービス(基盤;生産、調節、文化)に関する持続可能な開発目標を進めることである。創始者 のザーリッシュは生態学の体系ができる前に、生命群集としての森林の構造と機能(=生態系) を理解していた。そして、森林の持つ各種機能のなかで、人間にとって役立つものを持続的に 利用し続ける指針を提示した。生態系サービスが発揮されるためには、一次生産者である森林 植物の変動環境での持続的生産と土壌の保全が必須である。施業としては、適地適木、混交林化、 諸害耐性付与、生産基盤(=林道)の整備を進める必要がある。この中に生物多様性保全の視点 は不可欠である。高機能を備えた林分を各々の要素(パッチ)として “緑の回廊” を設け連結する ことで地域生態系(マトリクス)を持続的に利用できる。これらを維持・増進するためには、現 在の経済林の機能劣化を修復するために資金投入が必要だが、この周知のためにも森林教育を 推進する必要がある。
森林美学
A5 判/並製
本文:331 頁
定価:4,000 円+税
発行:海青社(2018年6月1日(初版第1刷))
はじめに
歴史をみると、イースター島の例に顕著であるが、森林の持続的 利用を損なった文明、民族は滅びる。ローマの歴史家タキトゥスが 著した物語・ゲルマニアの中で、森林を
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