LANDSCAPE DESIGN ランドスケープデザイン

石巻・田代島『しまおこしプロジェクト』 〜後編〜

宮城県石巻市

協力=NPO法人 石巻・田代島しまおこし隊

石巻市田代島の「しまおこしプロジェクト」について弊誌ではNo.110(2016年発行)とNo.126(2019年発行)の2回に渡り報告してきた。その後 発生した新型コロナ感染症がプロジェクトの進行に少なからずの影響を及ぼしたと思われるが、NPO法人石巻・田代島しまおこし隊は歩みを止めること はしなかった。逆にその間、新たな協力者も加わり力強く歩を進めてきた。弊誌では、ここ2年ほどの活動と田代島の持つポテンシャルについて、それ ぞれに関わってる方たちの報告を2回にわたり紹介する。尚、「田代島しまおこし隊」はコロナ禍で年が重なり、NPO6年目を迎える。

宮城県石巻市 田代島「猫と竹の館」プロジェクトについて

文・スケッチ=猪狩達夫(NPO法人石巻・田代島しまおこし隊代表理事)

無駄ではなかったコロナ禍の2年半

 石巻・田代島しまおこし隊が田代島で行っ てきた復興への活動は、新型コロナの蔓延等 もあり、道半ばというより端緒についたばか りと言えます。しかし、国内の経済的な活動 が2019年のコロナ前の頃に戻り始めた今日 この頃であり、私たちはむしろ新たなスター トを切るべき時期がやってきたと思ってい ます。

コロナ禍の2年の間も色々な情報を得て、 あるいは新たな協力者と私たちの復興への 活動に対する賛同者を得ることができ決し て無駄な2年間ではなかったと考えています が、同時に島おこしの方向の軌道修正を行う 必要性を感じています。それはランドスケー プデザイン誌No.143(2022年2月発行号)で 紹介したように、田代島に多くの人たちを迎 えるための環境整備に関して、田代島の特徴 的な環境や自然の特性を活かした整備を行 うべきであるということです。

例えば、 1.石巻(田代島)の日照時間は170時間/月 で、日本最大日照時間を誇る山梨県明野の 146時間/月よりも圧倒的に大きいこと。

2.田代島にはかつて1200人を超す島民が住 んでおり、島民にとっては貴重な資材として 食料として筍を得るための竹林が多く残さ れていること。この度の「猫と竹の館」に付設 する展望ガイド館にも仕上げ材として竹を 多用する計画。

 以上の2点に注目し、島のこの豊富な日照 量や植生を活かすなどに留意した環境整備 を行うことです。また「猫と竹の館」とセット で大泊海浜部敷地230坪に案内休憩コー ナーを持つ2階建て展望施設を設ける計画で すが、この施設のバルコニーの真正面に船着 き場が位置することになります。

竹の有効活用

 まず豊富な日照時間を利用する試みに関 しては、ランドスケープデザイン誌No.143 にて加藤義夫氏が「石巻湾田代島のエコ的未 来を考える」と題し触れていますが、「エコ トピアからネコトピア」を目標に環境と自然 の特性を活かした環境整備や活動をおこ なっていきたいと考えています。そして石 巻・田代島しまおこし隊のメンバーである堀 内道夫氏(光と風の研究所代表)が以前より 提唱している田代島の「竹」の有効利用につ いて考えることです。また、観光の視点で田 代島を起点とする詳細なクルージング計画 については、広永勇三氏が提案しています。

 島のあちこちに残され、放置された竹や 竹林についてですが、同じくランドスケープ デザイン誌No.143にて北畑栄氏が述べてい るように、宿泊施設に島産の竹林を一部利 用するのはもちろんのこと今後再開を予定 している「海の学校」のイベントにおいて、竹 灯りづくりや竹細工体験等で島の竹材を利 用するなど子供たちに竹の有効性を感じてもらいながら田代島の竹の有効活用を進め ていく予定です。

観光の拠点となる海のみんなの家 「猫と竹の館」

 さて、田代島の現在ですが島民が40人ほ どとなり、その多くが仁斗田港周辺に居住し ています。私たちしまおこし隊が活動拠点と している古民家カフェ「福猫」のある大泊港 の改修工事は終わりましたが、潮位の関係で 停泊できないフェリー便が発生するなど改 修前に比べて不便な状況になっています。

 しかし、田代島を訪問する旅行者のほとん どが必ず訪れる「猫神社」や灯台への探索 ルートの出発点として大泊港は大切な拠点 であることに変わりはありません。私はここ で現状何もない大泊港のフェリー発着場に 最も近い計画地に「海のみんなの家」と言え るような施設をつくる必要性を感じており、 このことから「猫と竹の館」の計画を進めた いと考えています。

 計画地は防災上の観点から住宅等として の建築許可が下りないため、簡易的な施設と して計画を行います。以下に「海のみんなの

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