LANDSCAPE DESIGN ランドスケープデザイン

未来に遺す、未来をつくるランドスケープ

十勝千年の森での思いで

高野文彰氏の突然の訃報を聞き、2011 年の「十勝千年の森」の取材を思い出した。 左の写真は取材の際に撮影した1枚である が、高野氏と撮影場所を探して千年の森を 探索したことを昨日のことのように思い出 す。少々肌寒さを感じる時節であったが、 撮影時には「この方が若く見えるだろ」と 着ていた上着を脱ぎ、軽くポケットに手を 入れ大空を見上げた。それはランドスケー プアーキテクトは大きな目標を持てという メッセージだったのかもしれない。

取材当日、高野氏は約束時間より1時間 以上早く現地に到着し、取材の手筈を整え ておいていただいていた。そして案内して いただいた際には終始笑顔で、まるで未来 を語るようにランドスケープをご説明して いただいた。

日本がひたすらに速さ、効率、拡大を求 めて動いていた時代に「ゆっくりつくって いきましょう」と提案し取り組んだ十勝千 年の森は、高野氏のランドスケープに対す る想いそのものだったのかもしれない。

大地をつくるランドスケープアーキテク ト。そんな呼称が相応しい高野文彰氏のご 冥福を心よりお祈りいたします。

(編集部)

高野文彰のライフスケープ

高野ランドスケーププランニング株式会社

からりと晴れた爽やかな陽気、北海道の夏の終わりと秋の始まりを告げる日だった2021年8月31日、高野ランドスケープ プランニング株式会社創業者、取締役会長である高野文彰が永眠しました(享年78歳)。

学生時代はアメリカに渡りランドスケープを学び、帰国後は国内外様々なエポックメイキングな作品を生み出し、また作品 創造だけにとどまらずIFLA(国際ランドスケープアーキテクト連盟)における国際交流活動や次世代の育成など多岐に渡 る活動をエネルギッシュにおこなってきました。その姿は趣味の乗馬で颯爽と駆け抜けていくかのようでした。

これらの活動や想いについては2020年3月18日に出版された「ランドスケープの夢」(建築資料研究社)にまとめられて いますが、ここではパートナーとしての視点から、高野文彰が遺してきたもの、伝えてきた事、創り出してきた未来を、功 績、人柄とともにお伝えしたいと思います。

歩 み

高野さんは、アメリカでランドスケープ を学びアメリカ造園学会から最優秀表彰 を受け、1975年に帰国後、高野ランドス ケーププランニングを設立。1979年に日 本造園学会賞を受賞した「国営沖縄海洋博 覧会記念公園 ちびっことりで」で華々しい

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