白鳥庭園を取り上げていただき、感謝します。しかし、白鳥庭園の成り立ちや都市計画公園に日本庭園様式が持ち込まれた背景についての記述が不十分であることが残念です。そのことについて補足させていただきながら、記事中において戸田芳樹氏がご指摘されていました疑問について、設計者としてお答えしたいと思います。
白鳥庭園のデザインコンセプトー広大な流域文化は市民のプライドの源泉ー
近代都市計画は、合理的かつ機械的であり、幾何学模様が優先し土地に刻まれた風土を改造し秩序を乱します。その断絶を埋めるのが、名古屋市の風土をよみがえらせる日本庭園の様式の導入でした。その狙いは、風土の回復とそれに伴う名古屋市民の名古屋に生きるプライドの創出でした。それはアイデンティティという言葉で表され、名古屋の歴史に依拠する日本庭園をつくることでした。
白鳥庭園は、北部山岳地帯から伊勢湾に向かって展開する愛知県、岐阜県にまたがる広大な流域圏文化を、日本庭園として表現し、庭園を訪れる人々にこの広大な自然を背景に居住するプライドを再確認していただくための風景デザインされた現代の日本庭園であることを大前提として話を進めます。
白鳥庭園に本格的池泉回遊式日本庭園が登場した、日本庭園史上の三つの意味
はじめに白鳥庭園は現代に造られた日本庭園であり、大名庭園や社寺庭園のように伝統的な日本庭園ではないことをご理解いただきたい。一方、戸田氏の白鳥庭園への見立ては、大名庭園など伝統的日本庭園の技法から、白鳥庭園を評価しています。これでは、現代庭園として日本庭園を創作した庭園設計者の意図と齟齬が生じます。そこで、白鳥庭園における現代日本庭園としての意味と価値を、以下三つの視点で整理しておきます。