1.公園の活用と社会的包摂
兵庫県立大学大学院緑環境景観マネジメ ント研究科では、海外からの講師を招聘し てウェブセミナーが開催されている。筆者 が一昨年の在職中に担当したウェブセミ ナーでは米国、英国、NZ、中国、韓国など 10数か国の専門家にご登壇いただき、プロ グラムを重ねた。それらの集大成として、 ㈱マルモ出版から「オープンスペースから 都市を創る」という図書も発行させて頂い た(R4年3月発行)。
図書を作成する中で印象に残ったのは、 コロナ禍で特に顕著になった「社会的包摂」 という課題に対する各国の取り組みであ る。例えば米国では、黒人差別に対する “Black Lives Matter”の運動をはじめとする 人種差別や貧困問題などに対して公園活用 の面からも多くの取り組みが行われてい る。市民に開放した恒久的な市民農園はそ の代表的なものと言える。英国では公園を 活用する市民の経済的背景や社会的背景などバックグラウンドの調査をしっかりと行 う中で、どのようにして、より多くの市民に 公園に来てもらえるかが熱心に検討されて いる。NZでは公園や緑を活用した社会参加 や社会復帰が有償の専門家の参入のもとで 取り組まれている。社会課題と言っても、 個々人の問題から人種や階層的な貧困など という社会全体の問題まで多種多様である。
日本でも貧困の問題は、昨今人々の注視 を集めてはいる。児童の7人に1人が貧困問 題を抱えているという報道に触れることも