協力=新宿エヌ・エスビル株式会社、豊島区
荒木芳邦(1921~1997)の作品を新宿と池袋に訪ねた。関西で活躍した荒木芳邦は関東での作品が少ない。残念ながらすでに失われたものも多 く、今回貴重な2作品と向き合う機会をつくった。作品は共に高層ビルの足元、新宿西口のNSビルと池袋のサンシャインビルに隣接する東池袋中央 公園である。
新宿西口のNSビルは昭和58年(1983)の作品で建築は日建設計、内部の大規模な吹き抜け空間が当時話題になった。しかしランドスケープに与 えられたスペースは建築と敷地の間にあたる皮一枚の植栽地。これでは荒木も力の出し様がなかったのではないかと、心配が先に立つ。
一方、昭和55年(1980)に竣工した東池袋中央公園(5,994㎡)はサンシャインビルのお膝元の都市公園。憩いの場として多くの利用者で賑わって いた。ここでの荒木芳邦は面目躍如の活躍を見せ、荒木節全開のパワフルな世界を展開していた。この2つの作品を通して荒木しか表現できない特 別な世界を紹介していきたい。
NSビルのランドスケープを見る
まず、NSビルから見ることとする。新宿駅 西口から新宿中央公園に延びる地下通路を そのまま進み、京王プラザビルの前庭を経て 地上へ。京王プラザの深谷光軌作品は不思 議さを湛えた外構空間で幾度来ても新発見 があり、つい足が向いてしまう。
NSビルのロケーションは西に都庁第2庁舎、 その背後が新宿中央公園、駅側にはKDDIビ ルがあり、都庁に接した道路景観のスケールは実に雄大だ。
NSビルに接すれば建築家がマスタープラン を手掛けていることは容易に推察できる。この 状況で荒木は何をするべきか相当悩んだで あろう。皮一枚のランドスケープ空間のクオリ ティを高めるため、荒木は造園技術を全て使 い、アイディアを捻り出した空気がこちらに伝 わってくる。本人の苦労が偲ばれる作品という べきであろう。