空間癒しの空間-日本庭園の真髄と人間感性の一体感
企画・構成/編集部 editing/「LANDSCAPE DESIGN」editorial department
取材協力・翻訳/translation and In cooperation with Kurisu LLC
取材協力/土沼隆雄氏 Takao Donuma
細谷恒夫氏 Tuneo Hosoya
写真提供 photography/Kurisu LLC
アメリカ合衆国におけるもう一つの「雑木の庭」の展開ー 栗栖 宝一
Hoichi Kurisu's Adaptation of Zoki No Niwa in the United States of America
栗栖氏宝一氏は、アメリカ合衆国で人と自然を関係させ、そしてそれを仲介する日本庭園の意味 や存在を、常にJapanese Garden「雑木の庭」で具現化してきた。
確かに米国において「Japanese Garden」という異国を感じさせるもの、そして、それを求める 米国人にとっては極めて魅力的なものだったに違いない。だから求めるままに異国文化の象徴として の「Japanese Garden」を作庭する。しかし栗栖氏は違った。過去に栗栖氏が作庭したJapanese Garden「雑木の庭」を見ると、時として景物などを極力排してまるで陰影のごとく気配だけを感じさ せている場面も少なくない。もしかすると、庭園内各所の視点場を入り口にして、そこに佇む人に、 深く心の奥底に沁み込んでいく水音、そよ風、静寂を通して、恐れや怒り、絶望までをも取り払って 本当の自分に帰ることを実体験させたかったのかもしれない。
以前、私は栗栖氏の庭について、上記のことを話題にして話をしたことがあった。話をして分かっ たことだが、実は、栗栖氏はこれらを長い間ずっと意識して作庭に携わってきたのだという。この点で は、栗栖氏は、以下に述べる師・小形研三氏の雑木の庭が内包するマインド(小形さんが到達した かったもう一つのゴール)を確実に引き継ぎ、海外で発展させてきた。
栗栖氏はよく小形さんが存命なら何を考え、何をしていただろうかと話していた。多分、今なおこ れが栗栖氏自身のある意味バイブルで、常に小形さんが心の中にいるに違いない。
小形さんの庭は難しいと言われる。それは今までの庭づくりとは違った一定の構成理論に基づいて 作庭し維持誘導を図らなければ到達しえない審美の世界だからである。これについて栗栖氏は、も のの見事に数多くの洒脱な雑木の庭を米国各地に作庭し、今までになかったモダンな雑木の庭を定 着させた。
また小形さんの雑木の庭が持つ、いや日本庭園そのものが持つもう一つの側面、実は誰も気付 いていない人と自然の関係の本質(自然‐精神、素朴‐癒し、生命‐尊厳)などの心の内を、栗 栖氏のマインド(心の平穏なるもの)と重ねて、今、国際社会に向けて問いかけ発信しようとしている。
世界の人々は、日本庭園には何かあるぞと考えている節がある。もしかすると、それは現代人が 持つ精神や心の奥底に効いてくる何かで、日本庭園そのものが究極的な癒しの場となる可能性を秘 めているのではないかとも思う。サマリタン・レバノン・コミュニティ病院内庭園(医療環境賞2006) ほかで日本庭園の持つ予防医療や心療的医療効果を実証し、日本庭園の持つメンタリティーの存 在を海外というフィールドで確立した功績は大きい。
ローズクランス・グリフィン=ウィリアムソン・キャンパス / Rosecrance Griffin Williamson Campus
ローズクランス・グリフィン=ウイリアムソ ン・キャンパス
解説/Kurisu LLC
ローズクランスは民間の非営利団体で、さまざまな 施設を通して年間13、000世帯以上の家族を支援 しています。包括的なサービスにとして予防、治療 介入、解毒、体験的療法、重複診断へのケア、
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