(聞き手・文責=編集部)
「MOPAQ」の誕生
―― 三協フロンテアが展開するMOBILESPACEについて教えていただけますか。
鈴木洋帆氏(以下、鈴木。敬称略) 弊社は1969年創業で、現在全国に展示場230店舗、トランクルーム421店舗、そして10カ所の工場と28カ所のセンターを展開しています。私たちが目指しているビジネスモデルは「資源循環型ビジネス」であり、資材から生産し、販売、もしくはレンタルし使用しなくなった建物は買取り、再利用し最終的にはスクラップした後、使える材料は再利用するという資源の循環を目指しています。主には建設現場の仮設事務所やイベントなどの期間限定使用、最近ではコロナワクチンの接種会場などにも利用していただいています。また東日本大震災では仮設住宅としてもご提供させていただきました。
MOBILE SPACEについてですが、私たちは工業化建築物と呼んでいますが、建物を工場でつくることで現場の職人不足の対応、施工期間の短縮、そして品質の安定を特徴としています。さらには移設が可能であること、またデザイン性についてはラーメン構造により開放的な空間がつくれることも特徴です。
――ありがとうございます。2020年度から今年にかけて49カ所の展示場をリニューアルされており、今後もリニューアルの計画があるとお聞きしましたが、リニューアルに至った経緯をお話ししていただけますか。
鈴木 リニューアルした展示場を「MOPAQ」と呼んでいますが、製品をただ並べているだけの展示場から魅せる展示場にリニューアルしています。その際に建物の一部をレンタルスペースとして利用していただけるように開放したところ、地域住民に貢献できることがわかりました。このことから私たちは「小さな動くまちづくり」というコンセプトを掲げ、300坪ほどの小さな空間ではありますが、まちづくりに貢献したいと考えました。マルシェを開催した展示場もあるのですが、想定以上の方が来てくれて、しかも皆さんが笑顔で楽しんでいる様子を見て、私たちが目指すべき展示場の姿が鮮明になりました。そこで生まれたキーワードが「公園」です。展示場と敷地を合わせて「MOBILE SPACE PARK」として、公園のような展示場を目指しリニューアルを加速していった次第です。「MOPAQ」は「MOBILE SPACE」と「PARK」による造語ですが、最後の文字を「Q」としたのは、急速に変化した社会環境の中、働き方や暮らし方についてひとり一人が違う選択ができる時代となり、自分と向き合う場所でありたいと考え、「問=Question」から取っています。また私たちはビジネスするうえで「ハピネスへの支援」と「社会変化の適応」、「社会課題の解決」という3つの軸を設定していますが、この展示場リニューアルはそれらを実現するものであるとも考えています。
情報としてのランドスケープへの着目
――こうした理念を受けて、大林さんと丹部さんはどのように設計を進めたのでしょうか